Summer Cruising(8/8~8/14)
【0日目 8月9日 小網代】
日本列島南部を通過した台風の影響で、クルージングの予定が一日少なくなり、本来ならば三宅島にいるはずだった。その結果元の予定で訪れるはずの新島がカット――そんな9日の夜のこと。
22時頃に横になったのですが、身体は疲れているのですがなぜか寝付けず、30分ほどまどろんでいたらもう起床時間の1時に。
【1日目 8月10日 小網代→三宅島】
昼間にテンダーはラックに上げており、艤装も完了。ほとんど準備は終わっているので、あとはライフジャケットとハーネスなどをつけ、最後の打ち合わせをして出発します。
小網代の桟橋にくろしおを係留し、都市大も訪れて賑やかになった日大合宿所から漏れ聞こえてくる喧騒も聞こえなくなって久しく経った1時頃。暗闇に包まれた小網代湾から、一隻のヨットがこっそり湾外に出ていきました。
深夜2時に小網代を出発し、メインセールだけ上げて『赤白』まで機走で進み、ジャイブして方向転換。予報通り、風はあまり吹いていません。7ノットほどだったと思います。このクルージングに向けて夜間帆走の練習をした時とは打って変わり、穏やかな海です。夜には、荒れた海でしか帆走した経験がない私にとっては、かなり安心できる風域です。
それから2時間程経ち、夜が明けてきました。
個人的な意見ですが、クルージングは基本的にやることがありません。このために購入したスピーカーとスマートフォンを無線接続し、適当な音楽を流しますが、それすら飽きてきます。
押し寄せる眠気に抗いつつも、打ち負かされ、丁度交代するような形でヘルムと休憩を取りながら、そしていつもより多めに白い煙を吐き出すエンジンで、7ノットほどで順調に進んでいきます。
7時頃、大島の東側を通過し変針。三宅島に向かいます。
大島を通過した頃、風が少しだけ上がってくる瞬間があり、18ノットの風を掴んでアビームで帆走しました。8ノットほど艇速が出ており、風の力を感じました。
そんな風もあっという間に落ちて、再びジブを下ろしエンジンで機走。
私はあまりにもやることがなく、大島の写真や、いよいよ近づいてきた三宅島の写真を家族に送りつけ、『違いがわからない』という不毛なやり取りを繰り広げていました。
いよいよ見えてきた三宅島はかなり大きく見えました。なんとなく小さめの島を想像していたのですが、高さが思ったよりもある島だったのです。実際に三宅島の地図を見てみると、真ん中に三宅山があり、島の外周しか通行することができないという、ディズニーシー(真ん中に湖があり移動しにくい)的な構造をしていることが分かります。
さて、11時間ほどの船旅を終え、ようやく三宅島の阿古漁港に入港しました。
睡眠不足とまともに食べていないせいか、三宅島付近のうねりに、だいぶ船酔いしてしまいました。
我々が入港した10分後くらいに、蒲郡からダブルハンドで三宅島までやってきたというご夫婦のヨットが入港し、ひんやりと冷えたゼリーを頂きました。
入港した直後、我々の他に船はあまりいなかったのですが、三宅島を発つまでには、ヨットやパワーボートが多く入港し、桜工(日大)のOBの方が乗るヨットや、外国人の方(日本語ペラペラ)など多くの船が訪れていました。
料理長がカレーを作っている間に、
「氷買ってこいや」
という指令を受け、同期の福島と阿古漁港の周りを巡っていると、ピカピカの観光案内所的な場所や魚屋での聞き込みを経て、港から5分位の場所にあるかなり品揃えの豊富な商店にたどり着きました。外見はこぢんまりとした田舎の個人商店という感じなのですが、品揃えは豊富で、値段も本土とそこまで変わりはなく(酒類はちょっと高いですが)、ちょっとしたコンビニくらいの感じでかなり良い商店でした。
さて、その日はクタクタで遅い昼飯を食べ終わった後、私は船で休んでいたのですが、上級生二人は錆ヶ浜という錆っぽい名前の浜辺に向かい、遊んでいたそうです。次の日ちらっと錆ヶ浜を見ると、黒っぽい海岸にポツポツと人がいましたが、あまり泳ぐのに適している感じはしませんでした。
夜になると怠い身体を引き摺り、温泉に向かいました。50tと刻まれ、並べられたテトラポットを眺めつつ、ペタペタとサンダルの音を響かせながら、15分ほど歩いて温泉施設に向かいます。料金が何円だったか忘れてしまいましたが、おそらく500円くらいだったかと思います。
温泉で綺麗に汗を洗い流し、再びくろしおに戻ります。
夕食は何を食べたのか忘れてしまいました。その日は昼寝を2時間ほどしたのにも関わらず、10時頃に寝てしまいました。
去年も思ったことですが、島では意外と星が見えないな、と思いました。
【2日目 8月11日 三宅島】
島を山手線方式で巡るバスの時間に合わせて、恐ろしく早く設定された起床時間(確か6時)に、もちろん間に合うことなく、ダラダラと朝食を食べ終わった頃には、朝の8時。
2本目のバスすら乗り過ごし、仕方なく島を歩いて巡ることに。しかし、1日目から気付いていたことですが、猫が結構います。しかも大抵の猫は黙って人間如きになすがままにされています。さんざん身体を触られ、写真を撮られたあげく、なんの施しもなく去っていくニンゲンを、恨めしい目で見ていた……かどうかは定かではありませんが、猫が可愛かったです。これマジで登るのか……「僕(ともう一人)免許持ってるんで、レンタルバイクで原付き借りて良いですか?」と思いつつ歩いていた道中、イタチが車に轢かれて死んでいました。写真は撮りませんでしたが。
こんな場所もめぐりました。千と千尋感がすごい。
一旦バスに乗って船に戻り、昼食を食べることに。
温泉施設の隣にある御食事処で、漬け丼的なものを食べようとしたのですが、席についてところで、
「冷やしうどんか、アラビアータのみの取扱になっております」
とのこと。
他の3人は漬丼がないことにご立腹でしたが、旅行先でもファストフード店に平気で入る私は特に気にならず、アラビアータを食べました。普通に美味しかったです。
「ご飯はなんだかんだ言って東京のものが一番美味しいですよ」という意識がどこかにあったのかもしれません。三宅島は東京都だということに気付いたのは後のことです。伊豆諸島の車は品川ナンバーです。
艇長がクーラーからの水漏れを肩や頭にずっと食らってて可哀想でした。こういう拷問ってあるよな……と思いつつ、再び島散策へ。
事前に調べた三宅島の観光名所の中で唯一、私の記憶に残っていた眼鏡岩を見終わると、溶岩に埋もれた小学校を見に行くという三人と別れ、船に戻り休んでいました。初日の寝不足がここまで響いてきています。
この日の夜に、温泉で髭剃りを購入したのですが、島らしさを求めて、鼻の下の髭だけ伸ばしてみることにしました。
その日の夜も何を食べたのかよく覚えていませんが、多分早めに寝たのでしょう。次の日こそは早く起きて、神津島に向けて出発する日だったからです。
【3日目 8月11日 三宅島→神津島】
湾内でも10~20ノットほどの強風が吹き、
「これで出発するのか……」
湾内でこんなに吹いているのに、とビビっていたのですが、アビームで神津島までいけるとのこと。とはいえヘッドセールはNo.3、メインもワンポイントリーフし7~8ノットほどで神津島に向かいました。
若干雨も降り、海水も少し被るような寒いセーリングだったのですが、特に問題もなく神津島南沖に。そうするとブランケットなのか風が落ちたので、エンジンで島を回り神津島港へ入港しました。そのあたりからどんどん天気が良くなり、暖かくなってきました。
係留作業が終わったところで、夏らしい天気に心が踊ります。
また、湾内の海底が見通せます。
これ幸いに、と溜まっていた洗濯物を干し、砂浜に繰り出しました。ここで監督と合流します。
ここで初めての海水浴です。
お店を探し歩き回りましたが、昼間遊んだ砂浜沿いのお店に。
知らない人ですが、良い景色です。
確か海鮮ものはなかったと記憶していますが、とても美味しかったです。
夜も砂浜で過ごしました(私的反省ポイント)。
【4日目 神津島】
気分が悪く、起床して10時間くらいへばってました……。大反省です。
私以外の4名は、赤崎や多幸湾で泳いだり、念願の漬け丼を食べたようです。
私が他の部員になりきって多幸湾の様子や、漬け丼の素晴らしさを書こうと思いましたが、やめておきます。楽しそうな写真だけ添付致します。
後ろの岸壁に係留していたボートの方が泳いでおり、「水が綺麗―!」と仰っていましたが、その海水には実は……いや、やめておきま
あんなもん二度と飲むか! と思い続けた半日でした。15時頃には元気になりましたが。
まあ、楽しみを来年に残しておいた、ということで自分を納得させました。
ちょうど我々が神津島に滞在していたときに、テレビで神津島の特集をしていたそうで、私が行っていない赤崎や漬け丼の映像を見せられ、「ここ行った?」という家族からの問いかけには、なんとも言えない悲しい気持ちになりました。
夕焼けが綺麗でした。
【5日目 神津島→小網代】
「1ポンドは20キロだよ」
という夢を見て飛び起き、床で眠っていた艇長のお腹を軽く踏んでしまうというアクシデントもありつつ、起床したのは午前4時。というか、艇長が床で寝ているのに、私がソファで寝ているのはどうなんでしょうか。とはいえソファより床のほうが冷たくて眠りやすいという説もあるようです。
ちなみに1ポンド=0.454キロらしいです。
さて、とうとう楽しかったクルージングも今日で終わり!
60マイルぐらいあるけど、頑張って帰るぞ! と思ったか定かではありませんが。
またまた無風状態の海に出て、メインだけ上げて機走でとりあえず大島の元町付近を目指します。
もはや5周くらいしたのではないかというプレイリストで気を紛らわせつつ、穏やかで綺麗な海の上を進んでいくと、
「ピーピー」
と響き渡る警告音。どうやらエンジンから鳴っているようです。
急いで回転数を落とし、原因を調べると冷却水の温度異常で、まさかのエンジントラブル。そういえば、行きの行程中に、エンジンから出て来る煙の量が多いな、と思った記憶が蘇ります。
まだ、利島沖で風もなく、帆走はできそうにありません。
エンジンを停止、エンジンを冷やし、エンジンルームを開いてできるだけ熱がこもらないようにしてから、回転数を落として、5.5ノット(通常7ノット)程で進むことに。
途中、メインすら上げていない黒いマストの船とすれ違いました。回航でしょうか、雰囲気的にはクルージングっぽいなと思いました。
大島沖では本船をやりすごし、相変わらず「やることないな~」と思いながら、しつこくついてくる気がする大島から逃げ、三浦半島が見えて「帰ってきたぞー!」と思ったところで、
「ピーピー」
また冷却水の温度異常です。
相模湾を航行する船に助けを求めて曳航してもらいたい……と思いつつも、再びエンジンを止めて、様子見。更に回転数を落として進むことに。
しかしなんだか相模湾の海も、伊豆諸島と同じくらい綺麗に見えてしまうのは気のせいか……。
もはや排水がほとんどなくなっていく様に戦慄しながらも、なんとか無事入港。
ヒヤッとしました。12時間ほど掛かりました。
片付けを済ませ、船員、船体とも(一応)無事で帰港しました。
なお、エンジンは後日調べていただいた結果、熱交換器の部分にビニール片があり、海水(冷却水を冷やすためのもの)が熱交換器へ十分に供給されなかったということだったようです。今では無事直りました。
クルージング中伸ばし続けていた髭は、家に帰り、鏡を見るとすごく気持ち悪かったので、すぐに剃りました。この髭面でクルージング中過ごしていたのだと思うと、恥ずかしくなりました。
結局、クルージング中は風が弱く、スピンを一回も上げませんでした。帆走したのは2度だけでしたし、両方共アビームでしたので、楽チンでした。
遅くなりましたが、以上がクルージングの方向になります。
大変失礼しました。